多岐亡羊

社会を漂いもがいて何とか生き長らえる子羊です。

the blue rose

 一番好きだったポケモン動画実況者が引退した。

 最後の動画を投稿した後、富士の樹海に旅立っていき、消息不明である。

 彼が生きて帰ってくることを心から願っている。

 

 思えば、彼の動画然り、毎日何かに救われて生きてきた。死にたい、死にそうだと言い、思いが染みついていても、かろうじて生き長らえてきた。死は常に足を掴んで、緩やかに沼に引き摺りこもうとしている。永遠のように感じられる漆黒の夜、ニコ動を見続けて朝を迎えることで、何とか死の世界に全身を突っ込まずに済んでいる。浮き輪というか、ヘルパーというか、この世界に浮いていられるのはアニメだとか、動画だとか、生放送だとか、いつも、死と共にそれらが隣にいてくれるからだ。地に足は着いておらず、どこの世界にも手は届かないまま、ゆらゆらと揺蕩っている。まあ、永遠にそうなんだろう。

 そんな感じで23年。ああ、俺はずっと祝われたいのかもしれない。自らを呪う俺に、心からの祝福を。別に肯定して欲しいとかではない。ただ、今までよく生きてたな、これからも生きろよ、と雑草を部屋の前に投げ捨ててくれ。適当に残骸をかき集めて、死ぬ日にスープにして飲んでやるから。

 救いが欲しいといいながら、色んなものに毎日救われて生きている。実は自分で自分を祝い、励まし、手を差しのべ、救いながら生きているのかもしれない。

 自分で自分に花束を。毎日薔薇を飲み込んでいる貴方に花束を。もう花を触ることも出来ない貴方に花束を。

 旅立っていく彼に、特大の花束を。